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ジョン・ウー監督の「ペイチエック 消された記憶」を見て [映画]



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.251

数週間前に確かに見たはずなのだが、その部分の記憶を消されてしまって何も覚えていないから、おそらく下らない映画だったのだろう。ユマ、サーマンが出ていたことは覚えているが、べつにどおってこたあない。

仕方がないから浮きペデイアからそのまま引用してみると、「今から遠くない未来の話。フリーのコンピューターエンジニアマイケル・ジェニングスは、プロジェクトを完成させる度に、機密保持のためそのプロジェクト期間の記憶を消されていた。そんなある日、大企業のオールコム社から100億円もの大金を報酬に提示される。その代償は3年間分の記憶。しかし、記憶を消した後のマイケルが手にしたものは、19個のガラクタが入った紙袋だけだった。さらにマイケルは、FBIやオールコム社のエージェントに追われ始める」といういちおうフィリップ・K・デイック原作の近未来SFだったらしい。

「男たちの挽歌」のジョン・ウーもハリウッドにやって来ていろいろ苦労しているようだ。映画で食べるのも大変だ。


置き石のために横須賀線遅れたりその石置きたる人の心の暗闇 蝶人



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ビクター・フレミング監督の「風と共に去りぬ」を見て [映画]



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.250

原作を読んだことはありませんが、お話も映画の作りもかなりゾンザイなもので、どうしてこんなウドの大木のようなぬるい3流映画が世紀の名作扱いになっているのが不可解ですが、マックス・スターナーのテーマ音楽、アトランタ駅前の大俯瞰やビビアン・リーとクラーク・ゲイブルのなかなかの好演、なによりも辣腕デビッド・セルズニックのプロデュース力に依るもんでしょうな。

特にビビアン・リーは彼女のほんらいの性格を地でいった感じで、もともと演技は下手くそだけどここでは実力以上の存在感を発揮しています。

しかしこういうビビアン・リーというかスカーレット・オハラというような手合いは、南部のハイソサエテーならずとも昔からどこにでもいる嫌なやつですな。普通なら誰も見向きもしないが、たまたまちょいと美人だと男どもがちやほやして寄って来る。クラーク・ゲイブルなんかは、(撮影中にリー嬢から口が臭いと非難されていたようだが)、ついつい手が伸びて、結局お互いの貴重な人生を無駄にしてしまう。世間でまっとうなのはアシュレーとメラニー選手の方で、哀れと言うも愚かな気狂い御両人である。

されどあれだけ周囲に迷惑と面倒を掛ければ、さしものゲーブル選手だってもう帰ってきやしない。やれやらこれでお前さんも一貫の終わりかな、と思ったら、まだまだタラがある、とくらあ。大地主はいいね。

そんな便利なタラがあったら、ちょいとこちとらにも分けてくれえ、と言いたくなる。見たことも読んだこともないけど、さだめし続編ではまたぞろゲーブル選手に秋波を送るんでしょうな。

ところで東京生まれのオリビア・デ・ハビランド選手は、御年95歳で健在だとか。長生きしたもんが勝ち。ですかな。


しょうぐあいのある人が盲目にならぬよう月曜日には雨が降りますように 蝶人

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クロード・オータン=ララ監督の「赤と黒」を見て [映画]


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.249

スタンダールの原作による1954年制作の仏伊合作映画でこのたび色鮮やかなデジタルマスタープリントに仕上がった。なんせ有名な大作家のネタの映像化であるし、美男ジェラール・フィリップと美女ダニエル・ダリュー(御年96歳で健在!)の競演だから文句のつけようもないが、世評の高さと裏腹に小説も映画もどうということはない。

原作が階級闘争を描いた社会主義小説の嚆矢だなどと嘯く文芸評論家もいたようだが、さあそれはどうでしょうょうかねえ、小西さん。王政復古の腐敗と堕落を鋭く抉って7月革命を幻視したなぞというふやけた結果還元機能法なぞにたやすく依存しないよう気をつけてください赤頭巾ちゃん。

面白いのは主人公のジュリアン・ソレルが、いつも世が世ならば「赤」服を着てナポレオンの指揮下で勲を立てたと切歯扼腕することで、仕方なく黒い僧服を纏って貴族の女をたぶらかすわけだが、ここら辺はスタンダールことアンリ・ベールの実体験をなぞっているのだろう。この人はヴェートーヴェンと違って最後まで奈翁に対する幻想から抜けきれなかった最後の浪漫主義者であったのかもしれない。

もう映画なんか明後日のほうへ飛んでしまったが、スタンダールで面白いのは大岡昇平選手が激賞する小説ではなくて、自伝と音楽論と恋愛論くらいか。映画と違ってこれだけは「いくばくかの読者を幸福にする」こと請け合いである。

スタンダールは政治などにはトンチンカンだが、女を愛することにかけては天下一品だった。別に彼がいち抜けても、フランス文学史は全然困るこたあねえわな。


スマホもfacebookも要らないでしょ、ホントは 蝶人

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イサベル・コイシェ監督の「エレジー」を見て [映画]


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.248

フィリップ・ロスの原作をイサベル・コイシェが2008年に映画化した老いらくの恋の物語です。

古希に達した大学教授の主人公ベン・キングズレーが、花も恥じらう女子学生ペネロペ・クルスを落として朝な夕なにもてあそぶのだが、そのうち世間でよくあるように立場が逆転して突然ぽいと捨てられてしまい、身も世もなく毎日毎晩よよと泣き崩れる。その失楽園オヤジを慰めるのがなんとデニス・ホッパーでこれが彼の遺作となりました。

ところが若い男に走ったペネロペ嬢がある夜突然70爺に電話してきて、やっぱあなたが忘れられないわなぞとほざいてまた撚りを戻すという与話情浮名横櫛なもうやってられません、見てられませんなお噺。私はベン・キングズレーも嫌いならペネロペ嬢のからだのどこにも魅力を感じられない不幸な男なので、まったく感情移入することなくみ終えた次第です。

気になるのは老爺が若娘を落とす手口です。この映画の爺は教え子が卒業してからパーテーィなどでくどくので、「この狒狒爺、賢いなあ」と思ったのですが、以前私と同じ学校で長く教師をしていた先輩の話では、毎年複数のうら若き乙女が、「先生あたいとホテルへ行こ行こ」と毎年毎年誘ってきたらしい。

けれども私の場合にはただの一回も、そーゆー電撃フリントゴーゴー作戦のような大胆不敵な楽しい肉団子提案なぞ皆無だったので、この話を小耳にはさんだときにはかの9.11よりもあの3.11よりも激烈なショックを受けたのでした。やれやれ。

思い屈したる時は黙っているより発語したほうが楽になるよ嗚呼 蝶人


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リチャード・ロンクレイン監督の「ファイアーウオール」を見て [映画]



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.247

いつのまにか70歳になんなんとするハリソン・フォードフューチャーした06年制作のサスペンスアクション物映画です。

銀行のIT担当取締役を務めるフォード選手は、家族をまるごと自宅で人質に取られて顧客の口座から大金を盗むように脅迫されます。

はじめは老いたる処女兎のごとく大人しくしていたフォード選手でしたが、最後はぶよぶよと肥った老体に鞭打って若い犯人とはらはらドキドキの格闘を演じ、なんとかかんとか愛する家族と盗まれた大金を取り返すのですが、もうインディジョーンズ時代とは違うのに、同じようなタフガイを演じることを強いられているスターもつらいものです。

実入り無き息子が贈りしカーネーション病の母を強く慰む 蝶人

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今井正監督の「仇討」を見て [映画]

今井正監督の「仇討」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.247


なんといっても中村錦之助が圧倒的に素晴らしい。名監督に頤使された大根役者がかくも迫真の演技をもたらすとは、かの川島雄三における石原裕次郎に相似たり。さすがは今井正なり。橋本忍の脚本が良く出来ているが黛の音楽はシナエリオに付き過ぎ。どうせアルバイトの仕事だが、こういう微細な技術はとうてい武満には敵わない。ここでも三島雅夫が好演している。

 ふとしたもののはずみで2名の上級武士を剣で斃してしまった馬廻りの次男坊錦之助が、なんの落ち度もないにもかかわらず藩の役人のご都合主義で仇討ちされるという大チャンバラ悲劇。ラストの猛烈な血刀を大車輪で振り回しての決闘は思わず手に汗握るすさまじさであるが、楚々とした許嫁の三田佳子の白いうなじに挑発された錦之助が、思わずむらむらとなって納屋に連れ込んでらんばうしてしまうエピソードも忘れ難い。

で、今井正は、事が果てるまで女の声だけを聞かせて庭の数羽のちゃぼがえさをついばむシーンだけをしばらく映しているのであった。チャンチャン。


世の中は所詮金なりとく消えよ金なくば生きてゆけぬこの世の中 蝶人

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リチャード・ドナー監督の「タイムライン」を見て [映画]



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.246

巨大ハイテク企業が製作した転送装置で100年戦争の真っ只中にある1357年のフランスに送り込まれた現代人数名が、失踪した父親と再会したり、英仏の戦争に巻き込まれたり、当時の美人恋愛したり、秘密兵器を作って史実と違う結果を招来しようとしたりする波乱万丈のSF映画で、波乱万丈のわりにあんまり面白くない。そういう映画でしたね。

雨の日にはすべてのチューリップに傘をさす高橋睦郎こそ詩人というべし 蝶人


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フランク・キャプラ監督の「スミス都へ行く」を見る [映画]



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.245


私の付き合った非ユダヤ系のアメリカ人の多くは、どっちかというと率直で単純明快で
アホでハイテンションでそのノリについていくのが疲れてしまうが、どいつもこいつもひと癖ある陰険な仏蘭西人などと違って、おしなべてお人好しで好きだった。もちろん例外もあるけど。

 この映画を見ているとおそらくフランク・キャプラも、(アホではないけど)そういうアメリカ人だったような気がする。

キャプラの代表作といえばこういうハリウッドの映画ではなくて、大戦中に国の支援を受けて大量に作った愛国映画だ。これらをつらつら眺めていると、連合国は正義の味方で「悪魔の鬼畜枢軸を滅ぼせ」という単純明快な彼の正義感というものがじつに良く分かるが、この作品でも彼の敵味方の黒白がはっきりした熱血漢ぶりが充分に伝わってくる。

1938年のハリウッド映画で、なぜか指名されて上院議員になって田舎から首都に出てきたボーイスカウトバンドリーダーのジェームズスチュアートがどんぴしゃりの配役。ワンシントンのリーンカーン像と対面して正義と真実の政治家になろうと決意するドンキホーテにいつしか惹かれてゆくのがジーン・ハリスンで、彼女の助けを借りて上院で繰り広げるエンドレススピーチが本作の最大の見所。

最後はお決まりのハッピーエンドになるのだが後味は悪くない。最後には正義は悪に勝つのだから。


梨の花が咲いたら重治の「梨の花」を読んでみよう 蝶人

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川本三郎著「白秋望景」を読んで [読書]



照る日曇る日第514回

林芙美子に続いて著者が取り上げたのは、なんと北原白秋です。

明治大正昭和の3代にまたがって詩歌の世界で活躍したこのいぶし銀のような文学者の生涯と業績を、前著と同様に慈しむように、呼吸を共にするように、もう2度と戻らない昔を懐かしい昔をしみじみと振り返るように、書き表しています。

 廃市、柳河の自然の中ではぐくまれた伸びやかな詩魂が、若き日の名作「邪宗門」「思ひ出」を生んだのもつかの間、明治45年に引き起こした人妻との姦通罪事件による入獄、そして郷里の実家の倒産と一家逃亡は、詩人の生涯を激変させると共に、その文体と詩形をいわば「社会化」し、鍛え上げることになりました。

 詩壇の寵児として一斉風靡した若き絶頂期よりも、社会的現実との格闘や挫折を経た後の平易な童謡つくり、そしてどこか水墨画を思わせるような、晩年の内心の想いをありのままに歌いながら自由で自在な古淡の境地を高く評価する著者の主張には説得力がありますし、白秋は軟弱で思想が無いと馬鹿にする、頑なで浅墓なイデオロギー論者への反論もじゅうぶん頷けます。

脳内論理の思弁で世界を解釈したつもりの自称思想家よりも、軟弱で繊細な自然鑑賞家の直観的詩藻のほうが世界を正しく射ぬいていることが多いもの。

「からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。」

という詩句には、長谷川等伯の「松林図屏風」の極北の人世観がたゆたっているようです。

また、白秋の「からたちの花」が素晴らしいのは、それまでからたちの白い花や青い棘、まるい金色の実についてうたってきた詩人が第5連で突然、

「からたちのそばで泣いたよ。みんなみんなやさしかったよ。」

と転じるからだ、と説く著者はこの詩句に詩人白秋の真骨頂を見ているのですが、日本文学の本質は「涙」であると断じる著者ならではの卓抜な視点だと思います。


からたちのそばで泣きたる少年が「からたちの花」を作曲したり 蝶人

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ミシェル・ボワロン監督の「殿方ご免遊ばせ」を見て [映画]



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.243


「BB」ことブリジット・バルドーが主演するアホ馬鹿フランス映画。なんとベベちゃんが仏蘭西の大統領令嬢に扮してアンリ・ヴィダル扮する旦那の秘書官ミシェル・ルグラン!の浮気に対抗して(訪問中のシャルル・ボワイエ扮するボワイエ大公に恋愛ごっこを仕掛けるというドタバタおふざけの一幕物でがす。

 どこをとってどう褒めたらいいのか迷う映画ですが、発色の生々しい総天然色と、1957年当時は健在だったエアフラのプロペラ双発機と全身赤色のスチュアーデスの制服がお洒落です。
ベベちゃんはみだりに裸姿になったりして桃色ブロマイド風に観客を挑発せんとするが、別にどうってことない。こういう低能映画を乱発していたからこそヌーベルヴァーグが勃発したんだということがよく分かる映画です。


音楽を聴くときは必ず目を瞑ってしまうので免許は持っていない、はずの世界のサカモトが日産のEVの広告に出ている摩訶不思議 蝶人

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